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決してHTMLにするのがめんどくさいとかそういう理由じゃなくてブログ先行公開なんだからね!
それでは追記からどうぞ
パソコンからブログ追記探すの難しいような気がしてならないのですが、↓の広告と投稿時間とか書いてあるとこの真ん中にあります









 未だ姿の見えない敵が、騒がしい足音を近づけてくる。人が二人並んで歩けるかどうかという小道の中央、こちらに背を向けるトウヤは、ボールを握った右手をすっと引き、
「――メグミ、」
 今まさに飛び出してきた敵影へと、開閉スイッチを押し込んだボールをかざした。
「――サイコキネシス!」

 目が眩むような鋭い光が、一瞬視界を遮った。
 向かいの十字路から、水色の敵影が飛び出してくる。ミソラは暫し呆気にとられた。ボールから解放された光が形作ったポケモンは、主の先に指示した通りに、すぐさま念のオーラを纏った。
 額に乗せた大きな真珠と、バネのように巻いた尻尾。身構える痣の男の傍ら、ボヨンボヨンと飛び跳ねながらグレイシアと対峙したのは、そんなユニークな特徴を持つ、黒くて小さなポケモンであった。


「――……、あれ?」
 ぽつんと零したのは、それを繰り出した張本人である。
 クエスチョンマークを浮遊させるミソラの眺める前方、右手のボールを手前に構えたポーズのまま突っ立っているトウヤの前にいるのは、額に大きな真珠を乗せ、くるくる丸まった子豚の尻尾をお尻にひっつけ、真っ黒に日焼けしてちょっと小柄になったノクタスのハリで、それが水色の敵と無表情に対峙しながらサーモンピンクのホッピングで遊んでいる。
 ミソラが首を捻った。あれ、ともう一度言いながら、トウヤは自分の右腰を見た。トレーナーベルトのボールホルダーには確かに一つ目と二つ目のボールがひっついていて、三つ目のボールの中身は空で、空のボールは今自分が握っているのである。
 遅れてやってきたアヤノもその光景を見て、あれ、と呟いた。
 誰も何も言えない中で、そよそよと柔らかな風が吹き、ミソラの長い金髪を揺らし、浮遊するクエスチョンマークを揺らした。ぎこっ、ぎこっ、というぐずついた音が、ホッピングのバネからリズミカルに発せられた。
「……そう、か……」
 急に青ざめはじめたトウヤの独り言で、その沈黙は破られた。
「あれから一年の月日(作中では一週間かそこいらくらいだけど)が流れ……今年も、また……懲りずにこういうことを……!」
 がくんと崩れ落ち、畜生ッと噛みしめるように叫びながら拳を地面に打ち付け始めたトウヤの横で、駆け付けたミソラと黒いハリがホッピングの取り合いを始めた。アヤノは困って頭を掻いた。自分がせっかく引き連れてきた、自慢の水色のポケモン――オーロラポケモンのスイクンについては、もはや誰も触れてくれそうではない。
 さてここからノープランだけどどうするかな、とアヤノが腕を組んだところで、ハリからホッピングを奪い取った金髪がきゃいきゃいと言いながら向こうの方へと走り始めた。ノクタスの方はその場にうずくまってめそめそと涙をこぼしている。その横で、背の高い影がゆらりと起き上がった――そして不敵に口角を上げた。影の落ちた顔に光る双眸の色は、先程までの敵方のものとは完全に一線を画している。その男が、手にしていたボールをゆっくりとベルトに戻した。アヤノはごくりと唾を呑んだ。

「コンパルソリー」

 低い、声が。宴の始まりを告げるように、ココウの一角を席巻した。
 
――――チャララーッチャッチャラーチャーラッチャラララー!

 突如どこかから鳴り響いたBGMに押されるように、アヤノのつけていたトレーナーベルトのボール達が、わさわさわさと動き始めた。
「なっ、何ッ!?」

――――チャララーッチャッチャラーチャーラッチャラララー!(二回目)

 気が付けば、アヤノと相対するトウヤのベルトのボール達もわさわさと揺れている。すると間もなく、ボール達は二人の手前へと飛び出し目にもとまらぬ速さで何やらトランスフォームを始めたではないか。残像を残しつつガシャガシャ音を立てて何か板的な物に形を変えていくボールの前で、アヤノはわたわたと指を動かし、トウヤはただにやにやするばかりである。
 ハリが顔を上げた。その瞳から、大粒の涙がひとつ零れた――それを合図とするかの如く、また何か別の影が屋根の上から飛び降りてきた。
「ててててれれれん! デデーッデデーッ」
 BGMに流れる曲の前奏を自ら歌い上げた、いつの間にか煌びやかな星柄の緑のタンクトップに衣装チェンジしていたタケヒロが、きっ、とマイクを構えた。背中に背負った一対のポッポの羽を広げた。そして小指を立てた。


※ここからはこちらのBGMでお楽しみください
 SLASH!! 歌:太田美知彦 
 http://www.youtube.com/watch?v=TFILHKmCfoo&feature=related 


「――一枚のカードッ! はぁーなっつっヒカリィがッ! oh!」
 対峙する二人の間、美声をもってノリノリで歌い始めたタケヒロをよそに、トウヤはどこからか数十枚のポケモンカードの束を取り出した。そして手裏剣投げでそのカードを二枚ほどアヤノへ向けて放った。
「そのカードで戦ってください!」
「このものがったりのッ! はーじまり告げてるゥッ! oh!」
「ポケモンカード……ハッ、バトルベルトか!」
 気が付けば変形したボールが形作っていたカードゲームのプレイマットを搭載したテーブルを見、アヤノは驚愕の表情を浮かべた――説明しよう! ここで言うバトルベルトとは、ネット小説家照風めめ氏が連載中の『ポケモンカードゲームシリーズ(通称PCS)http://yakkun.com/php/bbs/novel/index.php/NjgzNTI5Mm/』に登場するかなりナイスな機械なのである! 詳しくはこちらへhttp://www15.atwiki.jp/kinaga/pages/44.html
「君たちは既に! 主人公なんだ! オーライ!?」
 塀の上という名の特設ステージを駆けずり回りながら一人見えない観衆を煽っているタケヒロを尻目に、ポケモンカードを装備した二人は完全に二人の世界に入りきっている。トウヤが数十枚を、アヤノが貰った二枚のカードをデッキポケットに突っ込み、それぞれシャッフルされたデッキから手札となるカードを引き出して――早くも気付いてしまった。アヤノはもうすでにデッキの残量がゼロ。ポケモンカードゲームにおいて、自分の番で山札を引けないという事はつまり、即刻死を意味するのである。
(あれ? これ次のターンで負けじゃね?)
「先攻は僕が頂く!」
 分かっているのかいないのか、トウヤはデッキに手を掛けた。
「ゲッダップンファイッ!」「ドロー!」
 アァクをかーざそーおー、とタケヒロが低い声でねっとりと歌い上げている間に、トウヤは今しがた引いたカードをちらりと確認し――ちょっと困った顔でアヤノの方を一瞥すると、それを何事もなかったかのようにデッキの真ん中に差し込んだ。
 それからズボンのポケットの中に手を突っ込むと、そこに潜めていた一枚のカードを引き抜いた。
「ドロー!」
「反則だ!」
 アヤノの叫びも虚しく、トウヤは先刻の三つ目のモンスターボールと全く同じ動作でそのカードを手前にかざした。カードから激しい光が迸り、BGM担当のタケヒロの拳にも思わず力が入る。
「ユーウキをリィアラ(舌を巻きながら)イズしっろっ!」
「ふははっ! アヤノさん、見せてやるぜ」
「ゲーェ(声を裏返しつつ)ジをフッ切ィるくらいにィッ!」
「これが僕の神のカード……」
「エーヴォリューションする君ィがぁテイマァァァアァァウワァシァァァーッ!」
「出でよ、ノクタァァアス!」
 やっぱりか! ――アヤノの心の中での全力のツッコミが決まったところで、カードから放たれていた光が止み、
 同時にBGMが、ぴたりと止まった。
「Slash the life(決めポーズ)ッ! パワァァをあげー……あれ? なんで曲止まってんの?」
「……違うな、何か違う」
 小さくぼやき、ノクタスのカードをポケットの中にもう一度しまい込みながら、トウヤは目の前のテーブルに手を掛ける。
「俺これからサビだったんだけど、俺サビ歌ってないんだけど一番キモチイイとこ」
「偽更新っていう試みは去年もやったしその前にも一回やっただろう。未開の境地に踏み入れてこその新年度だ、そろそろ目標の三千字も超えたしこれ以上引き延ばすことはない」
「引き延ばすって言うか俺サビ歌えてないんだけど」
 普段通りのトーンで食いついてくるタケヒロに、トウヤはモンスターボールが変形して作られたはずのテーブルをよいしょと担ぎ上げながら、蔑んだ視線を彼に送った。
「人様の小説の小道具をこんな風に弄ぶって言うのも、よく考えたら気が引ける」
「よく考えなくても分かれよ」
 ていうかやるならちゃんと最後までやりきれよ、というタケヒロの言葉に、分かってないなとトウヤは首を振った。二人のやり取りのさなかに、向こうの十字路をホッピングで横切っていくミソラを見つけて、ハリは重い腰を上げた。アヤノはその間に、あまりにも構ってもらえなかったために少し落ち込んでいるスイクンの首元を撫でながら、東の方へと踵を返した。
「知ってるか、タケヒロ」
「何を」
「牛乳に含まれる、κ(カッパ)カゼインの一次構造を」
 テーブルを肩に担ぎながら、トウヤはのそのそと遠ざかっていく黒色の従者の背中を物憂げな瞳で眺めている。
「乳の中では、数種のカゼインが直径三十~三百mm程度のミセルを形成しており、κカゼインはミセル表面に局在している。ここに、レンネット――哺乳動物の第四胃で作られる酵素の複合体の呼称で、主には『キモシン』であるが――を加えると、キモシンの作用によりκカゼインがN末端――1~105アミノ酸からなるパラκカゼインと、C末端――106~169アミノ酸からなるグリコマクロペプチドとに分解される。グリコマクロペプチドは切断されホエー中に放出され電気の偏りが生じ、静電気的相互作用、また疎水的相互作用の結果カゼインミセル同士の結合が起こり凝集、沈殿する。これを、『レンネット凝固』と呼ぶんだ……」
 それだけ呟くと、トウヤもまたタケヒロの前から立ち去っていった。
 強い日差しが、ゆらゆらと遠い景色を揺らしている。
 ……今の話に。一体、どんな意味があったのだろう――タケヒロは目を閉じ考える。いくつかの悲しい思い、例えば今更新に出せなかった何人かの主要キャラのこととか、結局四千字超えちゃったということとか、きっと意味なんてないと分かりながらもこんなものをここまで読んでしまったとっても愛らしい読者様のあなたのこととかを思い浮かべながら、ゆっくりと振り向いた。
 そしてマイクを構えた。
 そして小指を立てた。
「きたる五月某日、エグ●イルのボーカルの片方であるTAK●HIROにめっちゃ名前が似ていると評判のこの俺が、待望のデビューシングル『I’m sorry about it』を満を持して発売することが決定! 詳細は下のURLで! 皆聞いてくれよな!」
 http://nekoanizya.hishaku.com/41.htm
それだけ投げると、少年はよく晴れた日の朝焼けのようなすがすがしい笑顔を浮かべ、一対のポッポの翼を広げ空高く飛び立っていったのである。


~3・連中の正義 完~







■タケヒロの投げていったURLはうちのサイトにつながっています
■なんかごめん
■二三日中くらいに正規版更新しま……す……嘘かも……

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