Always Look on the Bright Side of Life
やや間のあいたげっしょく番外
追記から~
1→ http://kogu.blog.shinobi.jp/Entry/1307/
2→ http://kogu.blog.shinobi.jp/Entry/1309/
3
僕と『藤代家』との交流は、決して、心地の良い始まり方ではなかった。
家の前で五分ほど勇気を振り絞り、やっとの思いで震えながらドアチャイムを鳴らすと、出てきたのは少し年上に見える女だった。
ちょっと引くくらいに真っ青だったその顔が、今でも脳裏に焼きついている。肩につかない位置で切りそろえられた黒髪は、汗に濡れ、べったりと体に貼り付いていた。多分そうすることが無礼だと判断ができないくらいにひどく疲れている様子で、僕を見下ろして、怪訝と顔を顰めた――夏で、半袖を着ていたから、そういう顔をされると自分でも左半身が気になりだした。
「……あの、何かご用ですか?」
女は問いながら、靴箱と思しき棚に腕をついていた。そうしないと立っていられないくらいに疲労しているようだった。
この家はよそう、と咄嗟に考えたのだけれど、その直後にグレンの顔がふとよぎって、自分たちの置かれている状況だってけっこうまずいのだということを改めて認識する。当時、今よりワンサイズ細いトレーナーベルトにひっついていたたった一つのモンスターボールに、こっそりと触れる。ハリに見られている、と思うと、自然と言葉が出ていく時は多かった。
まぁ、けれど、自然に言葉は出ていかなかった。と、と、と、と、とめてくれませんか、みたいに、あまりにもたどたどしく、単刀直入に僕は言った。ややあってから、女は僅かに目を丸めた。その瞬間だけ、顔に生気が戻った気がした。
「あ、あの……宿が……なくて……その、お祭りで」
「あぁ……」
承知して女は頷いた。多分よくあることなのだろう。
前傾していた体をだるそうに起こすと、女はまた覇気のない顔をして、僕から目を背けた。
「ごめんね、うちは無理。今、奥で、お母さんに陣痛が来てて、大変だから……」
あっ、と喉から声が出たっきり、すいませんでしたも何も僕は言えなかった。やつれた表情でごめんね、と繰り返して、にこりともせずに戸を閉められると、ここにいてはいけないと告げられたようで、慌てて踵を返し敷地を飛び出した。
陣痛。人が生まれるということだ。それって、凄く、大変なことだ。それはそうに違いない。――どくどくと高鳴る鼓動を、坂道を全力で駆け抜けることで紛らわそうとした。大変だから仕方ない、と言い聞かせはするものの、ありったけの勇気を込めて特攻した場所で全く歓迎されないどころか迷惑までかけて突き返されれば、元から低かったやる気みたいなものは、一気に底辺まで落ちていくより他にない。
結局、坂の麓の、グレンと別れたところまで僕は駆け戻ってきた。グレンはどこか他の家を当たっているのだろう。あいつの事だから、あっさり宿を確保して、すぐに戻ってくるに違いない。その家に僕のような気味の悪い容姿の奴がひょこっと紛れていく事まで、迎え入れてくれるかは分からないけれど……息を整えながら丘の上を見上げる。あの家の中で、痛みに呻く母親をあの女の子が介抱する様が、一瞬脳裏に浮かび上がって、ぱちんと跡形もなく消えた。
*******
一人称でやる意味が分からない
今回あんまり喋ることないっていうか一文目に尽きますね でも一文目……書き足したぶんで……足したの10分前くらいです……(
追記から~
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2→ http://kogu.blog.shinobi.jp/Entry/1309/
3
僕と『藤代家』との交流は、決して、心地の良い始まり方ではなかった。
家の前で五分ほど勇気を振り絞り、やっとの思いで震えながらドアチャイムを鳴らすと、出てきたのは少し年上に見える女だった。
ちょっと引くくらいに真っ青だったその顔が、今でも脳裏に焼きついている。肩につかない位置で切りそろえられた黒髪は、汗に濡れ、べったりと体に貼り付いていた。多分そうすることが無礼だと判断ができないくらいにひどく疲れている様子で、僕を見下ろして、怪訝と顔を顰めた――夏で、半袖を着ていたから、そういう顔をされると自分でも左半身が気になりだした。
「……あの、何かご用ですか?」
女は問いながら、靴箱と思しき棚に腕をついていた。そうしないと立っていられないくらいに疲労しているようだった。
この家はよそう、と咄嗟に考えたのだけれど、その直後にグレンの顔がふとよぎって、自分たちの置かれている状況だってけっこうまずいのだということを改めて認識する。当時、今よりワンサイズ細いトレーナーベルトにひっついていたたった一つのモンスターボールに、こっそりと触れる。ハリに見られている、と思うと、自然と言葉が出ていく時は多かった。
まぁ、けれど、自然に言葉は出ていかなかった。と、と、と、と、とめてくれませんか、みたいに、あまりにもたどたどしく、単刀直入に僕は言った。ややあってから、女は僅かに目を丸めた。その瞬間だけ、顔に生気が戻った気がした。
「あ、あの……宿が……なくて……その、お祭りで」
「あぁ……」
承知して女は頷いた。多分よくあることなのだろう。
前傾していた体をだるそうに起こすと、女はまた覇気のない顔をして、僕から目を背けた。
「ごめんね、うちは無理。今、奥で、お母さんに陣痛が来てて、大変だから……」
あっ、と喉から声が出たっきり、すいませんでしたも何も僕は言えなかった。やつれた表情でごめんね、と繰り返して、にこりともせずに戸を閉められると、ここにいてはいけないと告げられたようで、慌てて踵を返し敷地を飛び出した。
陣痛。人が生まれるということだ。それって、凄く、大変なことだ。それはそうに違いない。――どくどくと高鳴る鼓動を、坂道を全力で駆け抜けることで紛らわそうとした。大変だから仕方ない、と言い聞かせはするものの、ありったけの勇気を込めて特攻した場所で全く歓迎されないどころか迷惑までかけて突き返されれば、元から低かったやる気みたいなものは、一気に底辺まで落ちていくより他にない。
結局、坂の麓の、グレンと別れたところまで僕は駆け戻ってきた。グレンはどこか他の家を当たっているのだろう。あいつの事だから、あっさり宿を確保して、すぐに戻ってくるに違いない。その家に僕のような気味の悪い容姿の奴がひょこっと紛れていく事まで、迎え入れてくれるかは分からないけれど……息を整えながら丘の上を見上げる。あの家の中で、痛みに呻く母親をあの女の子が介抱する様が、一瞬脳裏に浮かび上がって、ぱちんと跡形もなく消えた。
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一人称でやる意味が分からない
今回あんまり喋ることないっていうか一文目に尽きますね でも一文目……書き足したぶんで……足したの10分前くらいです……(
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